中小製造業を専門とする動画制作サービスを提供するカンノ・カンパニー。社長自ら動画の取材・企画・構成・撮影・編集までを1人でこなし、短期間でニーズに合った動画を完成させることができます。また動画内製化に向けて撮影や編集のノウハウが学べるオンライン講習も人気。
有限会社カンノ・カンパニー
事業承継を機に、システム開発から動画制作にビジネス基盤を刷新。
コロナ禍の急激な変化も追い風に。
会社概要
記事のポイント!
- 後継者が本質を見極めて事業計画を策定
- 承継後のビジネスの準備をしていたことで急激な変化にいち早く対応
- 迅速かつ柔軟な動画制作でお客様のニーズにこたえ、自社、またお客様の事業の可能性を広げる
事業承継に関わる手続きとその先のビジネスのために
カンノ・カンパニーの創業は1990年。商社の中で大規模な情報システムの開発・運用・保守を手掛けていた菅野和彦氏(前社長)が、自らシステム開発を受託するために独立・起業しました。その後、長男の菅野契也氏(現社長)が18歳のときに同社に入社。ソフトウェアエンジニアとして情報システムの保守やサービス開発などを担当していた契也氏でしたが、新たな世界を知るために、経験を積むべく、全くの畑違いであるイタリアでの3年半の料理修行に取り組みました。異例のキャリアを経て帰国後は中小製造業専門の動画制作サービスをはじめました。
常に時代の一歩先を読んできた和彦氏。事業承継は起業したときから考えていたとのこと。2019年、60歳を目前に控えていた和彦氏は契也氏へ事業を渡すタイミングだと感じていました。事業承継を通じて、中核事業をシステム開発から動画制作に切り替えていきたいという想いもあり、無料の専門家派遣制度を受けることにしました。
「後継者の時代の経営計画策定」や「戦略的な広告展開」、「技術基盤の整備」を実現
専門的な知識を要する株式の譲渡や贈与税といった事業承継にかかわる手続きに関しては担当コーディネーターにより、事前に要点や説明を受けた上で、必要に応じて税理士や中小企業診断士の力を借りて進めていきました。
一方で引き継いだビジネスを加速させるためには、後継者である契也氏によるカンノ・カンパニーの在り方、動画制作ビジネスの展開を考える必要がありました。そこで専門家から提案されたのが「事業承継円滑化支援助成金」の活用。
助成金の活用を通じて、事業承継を円滑に進めて行くための計画づくりと承継後の取り組みを専門家と検討。新規顧客の獲得に向けた顧客ニーズの調査、そこからあぶり出されたニーズに対応するための設備投資を行っていきました。
この助成金は人件費も助成対象になることから、契也氏を和彦氏がカンノ・カンパニーの社員として採用。後継者となる契也氏自身による経営計画の策定や各種規則等の社内基盤の整備といった業務への対価を支払うことができたことで、「日常業務にとらわれず、経営者としての準備期間を十分にとれたことが大きかった」と契也氏は語ります。
さらに、当社の魅力を広く伝えるために、産業交流展への出展と電子版日刊工業新聞への広告出稿を実施。これらも助成金を活用し、認知度やブランドの向上を図ることができました。
また、製造業向けの動画制作を得意とする契也氏。工場で精密機械などを撮影するために、高精細な動画の撮影が可能な最新のカメラ機材を揃えたことで、お客様の満足度向上につなげることができました。
「突拍子もないこと」が起きたときにも転換できた
和彦氏から契也氏への事業承継を数か月後に控えていた2020年4月、政府は新型コロナウイルス感染拡大にともない東京など7都府県に緊急事態宣言を発令。対面でのイベントが中止となり、動画制作の受注を期待していた製造業の展示会の開催がなくなったことで、売上が一気に下がります。しかし、契也氏が代表就任した同年8月を機に、展示会を主催していた企業側が、リアルではなくバーチャルな環境での営業へ切り替え始めたことで状況は一転。ウェブサイト上に掲載する動画の需要が急激に高まりました。そしてカンノ・カンパニーの社長が和彦氏から契也氏に変わると同時に動画の受注が殺到し、契也氏の多忙な日々が始まりました。
和彦氏は「私の時はシステム開発、次は動画制作というように1代、1事業だと考えています。ですから事業承継はビジネスモデルを転換するための下準備の期間。事業計画を立てていないと、コロナのような突拍子もないことが起きたときに転換できません。動画制作を軸に計画を立てていたことで、大きな変化にもいち早く手が打てたのだと思います。」と話してくださいました。助成金を活用して次の世代のビジネスの基盤を作ることで、変化に対応できた好例と言えます。
アジャイル型の動画制作で柔軟に迅速に創造する
お客様先でのヒアリングから撮影・編集まですべて契也氏1人で完結できることが、カンノ・カンパニーの動画制作の強みの一つです。たとえば空間に制限のある工場で何人もの撮影クルーによる撮影は困難。その点、1人であればお客様に迷惑をかけることなくスムーズに撮影できます。
さらなる強みは和彦氏がシステム開発をするうえで創業時から得意としてきた「アジャイル型*」を契也氏も受け継いでいるというところにあります。アジャイル型の動画制作とは、お客様からヒアリングしたら、絵コンテなどを作成せずに、即撮影。そして、編集し、お客様にお見せし修正をかけながら完成を目指します。短期間にお客様の求める動画を制作できるために、満足度の高い制作物が納品できます。
こうした契也氏の動画制作のノウハウを「伝える」ためにオンラインによる動画制作の講座を開始したところ、評判も上々。最近ではJICA関連の事業で海外の方向けに英語で撮影や編集について講習を行うなど、幅広い層に響くサービスとなりました。そのほかにも機械や商品の取扱説明のための動画を制作するなど、常に新たな可能性を模索しています。
今後の展望を契也氏に伺うと、「製造業を中心に多摩地域であまり知られていない事業の魅力を発信していきたい」、「事業者の持っている高度な技術を、当社の映像技術を通して、広く伝えていきたい」と意気込みを語ってくださいました。
*システムに変更がある前提で細かな仕様を決めずに開発期間を短期化し修正をかけながら完成形を目指す開発手法の一つ。
担当コーディネーターの声
中小企業では企業の強み=代表の強みの場合も多く、代表が交代することで企業の強みが変わることもあります。また、事業承継は企業の事業モデルを変革する機会でもあります。今回事例は助成金を活用し、後継者が自身の強みを活かした新たな事業モデルを自ら作成し、新事業の販促を企画することで、新代表時代の事業モデルでの事業拡大を実践している好例と考えます。
担当コーディネーター:會田 幸司
企業データ
会社名 | 有限会社カンノ・カンパニー |
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代表者 | 代表取締役 菅野契也 |
所在地 | 東京都三鷹市下連雀3-38-13-1001 |
電話 | 0422-41-9917 |
業種 | サービス業 |
URL | https://douga-seisakusho.com/ |