有限会社 紅谷

人生は一度きり。
ちょっと失敗してもなんとかなる。

商店概要

1913年創業の新島で唯一の和菓子屋「紅谷」。冠婚葬祭等で食される饅頭や大福の販売を中心に、土産品や日用雑貨等の品揃えも充実。店舗内にはゆったりとくつろげるCafeスペース「CAFE BENI」も併設され、人気メニューの「どら焼きセット」は観光客だけでなく、島民にも愛されています。さらに2022年10月には海を感じる一棟貸し宿「Villa BENI」をオープン。1日1組限定の宿は、新島でのゆったりとした時間を提供します。

記事のポイント!

  • 島に唯一の和菓子屋を後継者に事業承継
  • 後継者による新規事業の経営改善
  • 和菓子づくりの技術伝承の準備

新島唯一の和菓子屋を事業承継する覚悟

新島唯一の和菓子屋・紅谷。初代が東京・麴町の和菓子屋から独立し、療養のために訪れた新島で和菓子屋を創業したのが始まりで100年以上の歴史を誇ります。併設されたカフェではできたての和菓子を味わうことできます。
先代である比留間郁二氏は自身の高齢にともない事業承継の準備が必要と考え、商工会へ事業承継支援を申請しました。郁二氏の次女で後継者の稲田ゆみ氏は、事業承継に関して「本当だったら積極的に行うべきだと思う。でも、いざ自分が継ぐとなると覚悟がいる」と、複雑な想いだったようです。

新島唯一の和菓子屋を事業承継する覚悟

後継者による新規事業の収益拡大を目指して

支援では、事業承継計画書の作成のほか、ゆみ氏が新規事業として立ち上げたカフェ事業の収益拡大に向けた支援も行われました。カフェでは、コーヒーやソフトクリームの提供は行っていたものの、それ以外は特に何も提供していませんでした。そこで専門家の指導のもと、少しずつメニューを増やすことにしました。和菓子屋という強みを活かした「どら焼きセット」は島民や観光客に人気となり、今では定番メニューとなっています。また、カフェメニューが充実したため、採択された事業承継円滑化支援助成金を活用して、メニュー表や卓上ポップも作成しました。「予算を考慮した専門家の視点を基準に、必要と感じたものを積極的に導入しました」と話してくれた通り、助成金を活用して、近隣境界線を明確にするための調査・測量の依頼やホームページの作成など、次々に改善を図っていきました。

後継者による新規事業の収益拡大を目指して
※店内に併設されたCafeスペース「CAFE BENI」。開放的な空間でゆったりとくつろげる。

和菓子づくりの技術伝承のために

普段から先代とともに和菓子づくりの手伝いをするゆみ氏ですが、先代ほどの職人技はまだ身についていないと感じていました。そこで助成金を活用して、和菓子づくりの工程をわかりやすくするためのマニュアルレシピを作成して、製造工程を映像に残すことにしました。映像では、先代の細かな手の動きが記録され、意外な発見を得られたそうです。ただ、職人技は手を動かさなければ身につかず、感覚で覚えることが大切。それでも「いずれこの技術を継承しなければならない」という想いから、大きな一歩を踏み出しました。
事業承継に消極的だったゆみ氏も、「今日まで続いてきた和菓子屋を残したい。という想いが強くなった」といいます。そこには島民からの期待だけでなく、洋菓子を学ぶ娘さんの言葉もあったといいます。「娘から『和菓子のこと、ちゃんと覚えておいてよ!』と言われています。だから、娘が戻ってきた時のための環境を残してあげたいです」。

新島に活気を取り戻す宿泊施設のオープン

専門家によるアドバイスのおかげで、事業承継計画書の作成や助成金の活用など、着実に準備を進め、2019年に事業承継を完了しました。ゆみ氏は「教えることが苦手な父と、教わることが苦手なわたし。お互いにぎこちない部分があったため、専門家が間に入ってくれてスムーズに承継が進みました」と話してくれました。

コロナ禍でカフェ営業を自粛することになりましたが、所有していた物件を改修し、新たに宿泊事業に取り組むことにしました。こうして、2022年10月に「Villa BENI」がオープン。宿泊事業に関しては、新島に活気を取り戻すために周りのサポートを受けながら事業拡大を目指すそうです。また、今後は改めて和菓子作りにも本腰を入れていくといいます。周りからは「がんばりすぎではないか?」と言われるそうですが、ゆみ氏は「人生は一度きり。ちょっと失敗してもなんとかなる」と、明るく答えてくれました。

新島に活気を取り戻す宿泊施設のオープン
※2022年10月にオープンした宿泊施設「Villa BENI」。
※人気商品である「どら焼きセット」

担当コーディネーターの声

技術の伝承が難しい和菓子作りの現場において、製造工程を見える化する事で、承継が前進しました。また、事業承継までにやるべきことを洗い出し、期日を決め、順序だてて整理することで、お互いが納得して進めて頂く事が出来ました。和菓子を大切にしながらも、カフェや宿泊施設と常に新しいことに挑戦するゆみさんには、これからも新たな挑戦を続けてもらいたいです。

多摩・島しょ経営支援拠点

企業データ

事業所名 有限会社 紅谷
代表者 稲田ゆみ
住所 東京都新島村本村6-1
電話 04992-5-0055
業種 小売業・飲食業・宿泊業
URL https://niijima-beniya.com/

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